33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
リング星雲M57の中心星「13等ニセモノ説」の源流を求めて
2013-07-25 Thu 00:00
M57中心星の正しい位置はすでに解決した。現在、リングの穴の中に13等級の星は無いことも分かった。後は都市伝説の源流探しだ。これは犯人探しの様で多少なりとも心苦しさが無くはない。しかし、都市伝説になるだけの大家の言ということで、矛盾している様に見えてもそこには私たちが見落としている何かがあるのかもしれない。

これまでの経過:(1)リング星雲M57の中心星と「13等ニセモノ説」
        (2)で、結局M57の中心星はどれなのよ?
        (3)リング星雲M57の中心星「13等ニセモノ説」を辿る

(3)以降にTAKA3さんから提供いただいた資料をまとめて紹介する。

[1]中野繁著『恒星社天体観測シリーズ9 星雲星団の観測』(1966年初版第4版)

「中心部の13等星は10cmから見えます。中心星は15.5等(バーナード測定)で、直接見るには40~50cmを要し、大口径のテストスターとなっています。眼視光度はこんなに暗いのに写真光度は13等星といいます。故一戸直蔵博士はヤーキース40インチ屈折でこれを観察しその記録が残されています。」

中心星(15.5等)と中心部の星(13等)は区別されている。中心部の星はリングの中にあるのだろうか。

[2]中野繁著『新編 恒星社天体観測シリーズ9 星雲星団の観測』(1978年初版第1刷)

「ドイツのフォン・ハーンは1800年、f=20フィート反射で中心星を観察し光度15等と見つもった。リック天文台では写真等級13等、眼視等級13.5等としたが、眼視で見るには40cm以上を要するであろう故一戸直蔵先生はヤーキス40インチでこれを見た記録が残っている。この中心星は青白色で絶対温度1万度とされている。リングの中心から1’東に12等星があり、これは10cm以上で見えよう。現在主軸の位置角は63°とされている。初期の観測家は中心星が変光星だろうと考えたことがあるが現在はかんがえられていない。」

リック天文台での眼視等級13.5等は15.5等の誤植とは考えられないだろうか?それを仮定すれば特に問題無い様に思える。

[3]多胡昭彦著『彗星捜索者のための 多胡スケッチ集』(1984年発行)

「中心部に13等星があり、15cmで確認したことがあるので、10cm以上の望遠鏡を持っている人は試してみるとよい。」

多胡さんは中心星については言及していない。しかし、中心部に見えた13等星とは何なのだろうか。

[4]『The DEEP-SKY OBSERVER'S YEAR』(2001年発行)

「There are two stars of about 13th and 15th magnitude within M57. However, the contrast is such that seeing them visually will require at least a 250mm scope, excellent skies and high magnification to be sure.」

中心星については言及無し。13th and 15th magnitude within M57はリングの中なのだろうな。

中野繁さん、藤井旭さん、多胡昭彦さんはいずれも中心部に13等星が眼視で見えると書いている。いずれも我が国を代表する観測者の報告なのでとても誤認や錯覚で片付けるわけにはいかない。S.Uさんも言われる様に変光の可能性なども検討する必要があるかもしれない。では、中心星が変光星であれば矛盾無く説明がつくのだろうか。逆に中心星が変光星でない場合に、これら大家の記録を矛盾無く説明するにはどのように考えれば良いのだろうか。この問題、解決までにはもうしばらく時間がかかりそうだ。
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この記事のコメント
M57は星雲界のスーパースター、文献には事欠きませんが、都市伝説の源流はまだ遠し、というところでしょうか。

 で、私も、も一つ文献のご紹介です。

『宇宙の姿 天体写真集』 宮本正太郎(編)(1971 初版、1975 6刷)

「IV-29 琴座の環状星雲
 M57=NGC6720(パロマ山天文台)
 琴座の環状星雲はβ星とγ星の間にあり(IV-5参照)小口径の望遠鏡でも見える。緑色をしたリング状の星雲の中心に75000°という高温の星がある。星雲はこの中心星が気まぐれに吐き出した煙のようなものであろう。星雲の質量はわずかに0.17太陽、秒速19kmで膨張している。」

 これは、パロマ山天文台で撮影した白黒写真の解説で、写真には、リング内に2つの星がほぼ同じ明るさで写っています。写真にこれが中心星だと書いてはありませんが、解説を読む読者はおそらくは素直に写真のリングの中央に写っている星が中心星だと思うことでしょう。
 もちろん、それで正しく、それで当たり前なのですが、同じ頃に出た、藤井旭著『星雲星団ガイドブック』と読み比べた読者が当時いたら、混乱するか、2個の星のうち、どちらの写真等級が明るいのかを取り違えたかもしれません。
2013-07-25 Thu 19:39 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>『宇宙の姿 天体写真集』

この説明は問題なく受け入れられますね。

私の手元にさらに以下の2冊がありました。

[1]リック天文台撮影『新・天体写真集』(原書初版不明1970年日本語版出版)
こと座の環状星雲の説明の中には「中心星は光度15等」と書かれ、写真を見ると暗い星(15等くらい)が2つ写っています。

[2]荒木俊馬著『三訂新版 現代天文學事典』(1970年)の写真でもリング内に2つ写っていますが、中心星の方はかなり明るく写っています。

これまでに見て来た何枚かの写真から、M57中心星の写真光度は乾板の特性に大きく依存するということが分かりました。このことはちっとも不思議ではないのですが、「眼視で13等級に見える」話をどのように説明するか、これが最後の疑問ですね。
2013-07-25 Thu 21:59 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>「リック天文台」
 パロマ山、リック天文台と、外国の大天文台からの輸入系の本は、まっとうな記録の傾向のようですね。

>「眼視で13等級に見える」

 リングの穴内部の星雲のムラを星の明るさと認識してしまった可能性もあるかもしれません。ちょっと計算をしてみました。

 M57の全光度は、眼視の感覚的には8等くらいに見えます。また、多胡氏の図にもあるように、リングの穴内部もけっこう明るく見え、フラットとまではいかないまでも、リング内部がリングよりずっと暗いようには見えません(私の経験でもそうです)。そこで、リング内部の面積をリングそのものの1/3、穴の輝度をリングの輝度の1/3とすると、「穴だけの感覚的全光度」は10~11等となります。

 この穴は視直径40"くらいです。この中心に仮に視直径10"くらいの星雲のムラの光斑があったとしたら、それが13等に見えるかもしれません。

 自分でも何をどう考えて良いのかわかりませんが、「リングの穴の内部の星雲に明るさのムラがある」というふうに無意識裏に感じた観測者がいたとしたら、その観測者はそのムラを13等星として記録する可能性があるのではないでしょうか。

 並行して、変光星説も捨てがたいものがあります。ここで「変光星な皆様」にお尋ねしたいことがあります。海外の論文にある「変光星の証拠はない」という科学的分析は正しいと思うのですが、この手の解析は、比較的短期間の周期解析に偏っている可能性はないでしょうか。それでは、長期間の不規則変化については、ほとんどわからないということはないでしょうか。
2013-07-26 Fri 07:44 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
変光星なみなさまにヘルプを出してみました。
2013-07-26 Fri 17:17 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>「変光星なみなさま」
 どうぞよろしくお願いいたします。

>結局M57の中心星はどれなのよ?
 この同定の問題については、meinekoさんご紹介の白色矮星カタログで決着済でなんら問題はありませんが、このたび、GSCカタログの本拠であるSTSciのデータベースに、M57の中心星のデータを見つけたので、記録のために引用しておきます。これで、M57の中心星 = GSC2642-1202で、間違いないでしょう。

targnum: 77
name_1: NGC6720
name_2: PK63+13D1, GSC2642-1202
name_3: RING-NEBULA
descr_1: A,184
pos_1: RA = 18H 53M 35.05S +/- 1",
pos_2: DEC = +33D 01' 42.9" +/- 1",
pos_3: PLATE-ID=02UB
equinox: J2000
comment_1: CENTRAL STAR OF PLANETARY NEBULA
fluxnum_1: 1
fluxval_1: V=15.3

出典:
http://stecf-poa.stsci.edu/poa/FOS/props/4308c.prop
2013-07-27 Sat 06:13 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
だめ押しデータをありがとうございます。今回の問題にはいくつかの謎が含まれていますから、その内の一つである「ホンモノの中心星の位置」はこれで解決ということに致しましょう。

変光星なみなさまからの情報は少しまとまったところでお知らせ致します。
2013-07-27 Sat 06:53 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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