33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
高エネルギー加速器研究機構2013年一般公開を見学
2013-09-09 Mon 00:00
先にお知らせした高エネルギー加速器研究機構(KEK)の一般公開日。今年は月初めでなかったおかげで久しぶりに見に行くことができた。とは言っても仕事を終えて午後からの参加。駐車場は遥か彼方に止めることは想定内の上に、雨もけっこう降っているので、半ズボン+裸足にサンダルで行くことにした。

会場に着いて、朝から来ていた友だちと合流。彼は最近素粒子について知る機会があったので、本イベントをお勧めしておいた。私の今回の一番の目的は15時からの「素粒子を見逃さない超高感度な眼(センサー):その最前線と意外な応用」についての幅淳二先生の講演。その前に少し時間があったので研究本館の展示をいくつか回って、超高精細な分解能のある開発中のSOIピクセル検出器、CERNでのLHC実験の改修と期待について、J-PARCの大強度陽子加速器施設の運用について、ニュートリノ発生標的交換を体験できるミニチュア装置などについて説明をしてもらった。

1309081.jpg講演会場は研究本館裏手の4号館。写真はロビーの壁のオブジェ。KEKの成果を代表する重要なイベントを表しているのだろうか?

講演内容は、まず、粒子検出器の歴史と種類をざっと。箔検電器、霧箱、泡箱、シンチレーション検出器、スパークチェンバー、ワイヤーチェンバー、ワイヤレスチェンバー、SOIピクセル検出器。ワイヤーチェンバーまでは学生時代に知っていたが、ワイヤレスチェンバーもあるんだな。かつての泡箱実験の時代には粒子の経路を読み取る作業のためにスキャナーと呼ばれる女性たちが働いていたものだと語られたが、大阪市大の高エネルギー研究室にもいましたね。その後はBELL検出器とATLAS検出器の構造とそれらのバームクーヘン状のどのリングが何を検出しているかをざっと。最後に、粒子検出器が社会でどのように使われているかと将来への期待について。

お話は具体的で分かりやすかった(ヨメさんの感想)が、基礎知識の少ない人にはけっこう歯ごたえあったようだ。確かに素粒子とその振る舞い、その関連装置など、業界人とマニア以外には馴染み無いのは当然かもしれない。

1309082.jpg本日の成果物。アンケートに回答してタオルをゲット。

初めて参加の彼の感想は「こんなにたくさん来ているとは思わなかった」というもの。日曜日1日のみの開催になったことはあるだろうが、こんな雨の中、実際たくさんの入場者だと感じられた。

一方でこんなニュースも。
・科学系の部活ない中学が73%、指導教員不足で
 いろいろな場面で日本が崩れ始めていることを感じるが、科学技術立国日本もまもなく今は昔の夢物語になることを暗示させるニュースだ。いくら世界最高の技術を誇っても後継者を育てる土壌が用意されていないのでは未来は暗い。また、先進的な科学と誰もが知らなければならない科学の乖離が激しくなりそう。科学的に考えることも生きるための技術の一つだが、科学技術立国と自称する割にこれまでもその辺りが育っていないのに、今後はどうなるんだと思わざるを得ない。
別窓 | 物理ネタ | コメント:7
<<SDOR型変光星 Var C in M33 の増光 | 霞ヶ浦天体観測隊 | こ、これは!>>
この記事のコメント
KEKの一般公開にお友達もお誘いいただいて訪問してくださりありがとうございました。いろいろご収穫があったようでよかったです。4号館の壁のイベントの図は、特別なイベントではなく、芸術作品なので、芸術家の目にかなったものをコラージュしたものと思います。

 科学部が減ってきているのはゆゆしき事態ですね。何となく感じていましたが知りませんでした。KEKには多くの科学好きの高校生が団体で訪れ、科学教育が低調という感じはまったくしないのですが、おそらくは身近なクラスメートや先生と、自由に科学について語り合い、一緒に楽しむ雰囲気がない(あるいは時間的、気持ち的に余裕がない)のではないかと思います。この数字からすると、単純に理科教育に秀でた先生の「人材」がないためとは思えません。科学というものが「みんなで楽しむもの」から「個人で調べもの」に移行しつつあるのかもしれません。玉青さんが「天文古玩」で長野まゆみ氏の小説『天体議会』に関連して、かつては市中で観測会のハシゴができたような証言を紹介されていましたが、それに通じるものを感じました。KEKで高校生のための実習をすると、「よい機会だった、楽しめた」という感想をいただきます。私は、ぜひ、学校や家庭にその体験を持って帰って、KEKに来れなかった人とも一緒に科学を楽しんでほしいと伝えることが多いです。星見もそうですが、科学も、出かけて勉強するものではなく、身近で楽しむべきものです。

 それから一般公開で気になるのは、ちょっと個人で来ている中高生が少ないかなということですが、これはどのように感じられましたか?
2013-09-09 Mon 20:18 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>壁のイベントの図

そうですか。多くのイベントパターンの中から芸術家が抽出したイメージということですか。しかし、そのような中にこそ未来のトピックのヒントが表現されているかもしれませんね。

>科学部が減ってきているのはゆゆしき事態ですね

子どもの数が減っているから科学部も減っている、という意見もあります。もともと割合的に少なかった科学系の部活が目立って減少していることは考えられます。そう言う中ですから、KEKの様な施設を訪れる生徒さんは、「選択された集団」という見方を、S.Uさんのような受け入れ側としては持っておく必要がありそうです。一方で、科学部どころか、科学的なものにも触れないで年を重ねる若い世代がどんどん増えていくことこそ危惧するべきでしょう。KEKなどの施設への動員数の変化だけでは見落とされる部分がありそうですから。

>個人で来ている中高生が少ないかなということですが、これはどのように感じられましたか?

私たちはほんの14時から1時間弱本館にいて15時からの講演会へ入ってしまったので正確な状況をつかんでいないと思いますが、ヨメさんの印象では、高校生らしきは見かけなかったねというものです。確かに親に連れられた小学生はけっこう見かけましたが。いま思い出しましたが、これはプラネタリウムの入場者にも通じますね。

私の様な業界人なのか単なるマニアなのか分からない怪しげなおっさんに質問されるよりも、高校生に質問される方が、みなさんもどれだけ張り合いと未来への希望があるかと思わざるを得ませんね。
2013-09-09 Mon 21:10 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>KEK一般公開
 中高生はやはり少ないですよね。バスの乗り継ぎのことや、特に夏休みが終わった次の休みなので、あまり出かける気がしないというのもあるのかもしれません。

>マニアなのか分からない怪しげなおっさんに
 私はちょっと独自の考えをとっていて、現代の日本の素粒子や宇宙線観測を支えているのは、こういうマニアの大人の人で、社会のいろいろなところで、職種や思想信条に関係なく広くいらっしゃるから成り立っているのだと思います。大人の科学オタクの方は損得勘定なしの情熱を傾けて下さるので特に大事にしないといけないと思っています。(かすてんさんはセミプロ関係者でらっしゃますのでこれらのなかにははいりませんけど)

 一人で科学好き潜行中の高校生も、将来は研究者になるかこういう支持者になってくれるかどちらかだと思いますので、末永くよろしくという気持ちです。
2013-09-10 Tue 20:05 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>現代の日本の素粒子や宇宙線観測を支えているのは、こういうマニアの大人の人で、社会のいろいろなところで、職種や思想信条に関係なく広くいらっしゃるから成り立っている

それはS.Uさんが科学界に身を置いていらっしゃるからかもしれません。私の様に理系とか文系とかでくくれない社会にいますと、素粒子や宇宙線観測を支えている人がこの中にいるとは感じられません。ヒッグス粒子がニュースになったりすると、質問してくれる人はたまにはいますが。

>一人で科学好き潜行中の高校生も、将来は研究者になるかこういう支持者になってくれるかどちらかだと思いますので、末永くよろしくという気持ちです。

これはかなりの確率でそうなってくれるのではないでしょうか。私もそうした一人ですから。
2013-09-11 Wed 12:50 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>社会にいますと、素粒子や宇宙線観測を支えている人がこの中にいるとは感じられません

 そうですか。人数比としてはそんなに多くはないのでしょうね。
 一般公開は、そういう方々と思いのこもった話ができるので、貴重な場です。
2013-09-11 Wed 22:09 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>一般公開は、そういう方々と思いのこもった話ができるので、貴重な場です。

業界側の方のそうした心意気は、見学者へもじわっと伝わっている様です。初めてKEK一般公開へ行った友人が「日夜、素粒子を研究している科学者たちがフレンドリーに解説している姿なんぞは感動的でもありました。」という感想を述べています。
2013-09-13 Fri 17:04 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>初めてKEK一般公開へ行った友人
 そう言っていただけるのはありがたいことです。
 科学研究というのは本来「個人の潜行的興味」の発展であるべきで、それが「同志」の皆様とずっと同じ感動が共有できるよう願っております。
2013-09-15 Sun 07:51 | URL | S.U #BAqPrZh2[ 内容変更]
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

| 霞ヶ浦天体観測隊 |

FC2カウンター