33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
陽子の寿命が10^30年でも10^30個を見ていれば1年に1個程度は崩壊?
2016-12-08 Thu 00:00
11月20日の午後、つくばノバホールで開催された『科学と音楽の響宴2016』へ行ってきた。科学に関する講演は昨年ノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章さんのニュートリノ実験に関するお話。音楽は相澤政宏さんのフルートと大堀晴津子さんのピアノ演奏で、フルートの興味深いエピソードを交えての楽しい演奏会だった。梶田さんの話は深遠な物理学の講義ではなく、予想外の実験結果を徹底的に調べることで、ミスによる結果ではないことを確信し、新発見への突破口を見つけた過程を難しい話は抜きにわかりやすく語ってくれた。

1611211.jpgその中で、カミオカンデはもともとは大統一理論の予言する陽子崩壊を測定する目的に作られたという話があった。陽子崩壊の観測は自分が世話になっていた超高エネルギー研究室の別の先生が研究されていたので記憶に残るテーマだ。それはそうと、「陽子の寿命は10^30年と予測されていたので、10^30個の陽子を観測すれば1年に1個程度崩壊を観測できる」について休憩時間にヨメさんから疑問が提出された。
(1)寿命が10^30年ならば10^30個を見ていたところで10^30年かかるんじゃないの?
いやいや、これは平均寿命なので、数はものすごく少ないけど短時間で死ぬのもいれば、もっと寿命の長いのもいる。数はものすごく少ないけどたくさん集めれば短期間でも1個くらいは死ぬ奴が見つかるだろうと考えられる。
(2)でも、10^30個を見ていると、1年目1個死に、2年目1個死に、、、10^30年経ったら0個になるから10^30年以上の寿命はありえないんじゃないの?
いやいや、1年目1個死に、2年目1個死に、、、と減っていくと次第に10^30個より少なくなってしまうからその頃には1年に1個のペースでは死ななくなるので10^30年を越えて生き残るのも出てくる。
(3)平均寿命100年の人間を100人集めても、1年目に1人死ぬようには思えない?
いやいや人間は若い頃死ににくくて年とるにつれて死にやすくなるから素粒子とは死に方(死ぬ確率)が違う。
とまぁ、結局納得してもらえず、おかしなモヤモヤ感の残るコンサートになったらしい。
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この記事のコメント
>おかしなモヤモヤ感の残る
 梶田先生は高踏的なロマン溢れる話よりも現実の実地の実験の話をよく取り上げられる方のようですね。物理実験をしない一般の方には、それはそれでも夢があり、物理が日常になっている人たちの考えが伝わってよいのではないかと思います。

 でも、講演のモヤモヤをコンサートまで引きずった人が多かったかもしれませんね。

>人間は若い頃死ににくくて年とるにつれて死にやすくなるから素粒子とは死に方(死ぬ確率)が違う

 これはけっこう説明が難しいですね。動物やら電化製品のようにあらかじめ「寿命」が機構的に組み込まれていてそこに達すると「バタバタと」壊れるというのが「常識的な寿命」なので、素粒子の寿命というのは(こちらのほうが単純なのですが)かえって理解が難しいみたいです。日本語で「寿命」というと何か天が定めた「天寿」のようなイメージがあるのかもしれません。何か別の訳語、例えば mean lifetimeに対して「平均生存時間」のようなものを作ればよいのかもしれませんが、耳慣れない長い言葉の割りには決定打にはならないので難しいです。

2016-12-08 Thu 08:28 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>日本語で「寿命」というと何か天が定めた「天寿」のようなイメージがあるのかもしれません。
 モヤモヤ感の元はここなのでしょう。素粒子の「寿命」は「平均生存時間」のことだよという補足が入るとわかってくれる人がもう少し増えそうです。
2016-12-08 Thu 09:17 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
 素粒子が壊れる確率は常に一定であって、その内部構造は本質的に時間的に不変である。それが、丈夫になったり劣化することはない。仮に陽子の内部構造が変化してしまったら、それはもはや陽子ではない。

 一方、人間は内部の構造の部分部分が変化しうるので、胃が病気になったり、胃薬や胃の手術によってそれが快方に向かったりするので、その都度、死ぬ確率が変化する、年を取ると内部に弱いところが増えてくる、というふうに説明すると、ちょっとは興味を持ってもらえるでしょうか。
2016-12-08 Thu 16:44 | URL | S.U #RpDc/2sw[ 内容変更]
>というふうに説明すると、ちょっとは興味を持ってもらえるでしょうか。
 どうかなぁ。先の「平均生存時間」の説明を読んだヨメさんが「S.U.さんのコメントで、もやもや解消のヒントをつかめたかも。」と言っていましたので、むしろあの辺りまでの方が物理現象として理解してもらえるように思います。
2016-12-08 Thu 19:06 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
そうですか。あきませんか・・・。

>むしろあの辺りまでの方が物理現象として理解してもらえるように思います。

 そうですか。それならありがたいですが・・・、でもそれなら、かすてんさんのご説明の(1),(3)からほとんど何も進んでいませんよ。
2016-12-09 Fri 09:58 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>かすてんさんのご説明の(1),(3)からほとんど何も進んでいませんよ。
 いやいや、「平均生存時間」という、より的確な用語の力だと思います。「寿命」を耳にした時一般の人は「人の寿命」のイメージを素粒子に当てはめるしかないので、モヤモヤ感が残るでしょうが、「平均生存時間」では、人の寿命を連想させる余地が小さくなって物理現象として理解しやすいのではないでしょうか。アナロジーが有効な場合もありますが、逆効果もあるのですね。
2016-12-09 Fri 10:13 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>「平均生存時間」
 私は物理の感覚に毒されすぎて、「寿命」≡「平均生存時間」という感覚なのですが、一般にはそうではないのですね。要注意だと思います。

 英語では、粒子の寿命は通常は (mean) lifetime で、人の寿命は life span と言って、lifetime というのはないみたいです。ただ、省略するとどちらも life でしょうから英語圏でも紛れているかもしれません。
2016-12-09 Fri 12:33 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>私は物理の感覚に毒されすぎて、「寿命」≡「平均生存時間」という感覚なのですが、一般にはそうではないのですね。要注意だと思います。
 S.Uさんに限らず、物理の人には「寿命」≡「平均生存時間」は当たり前すぎて要説明とは気がつかずに先へ話を進めてしまいがちですが、案外普通の人は深遠な物理学の話よりもこういう生活用語と同じ用語のところで立ち往生するのかもしれません。要注意ですね。
2016-12-09 Fri 18:47 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>こういう生活用語と同じ用語のところで立ち往生
 例えば、クォークには「色」と「香り」がありますよね。これは、正式な物理用語です(英語では、color と flavor です)が、これを一般の人に説明するときには、「クォークの『色』と『香り』は。私たちが日常感じているものとはまったく違うもので、それらと似ているところもあれば違うところもあります。」とか言って余分の時間を費やさねばなりません。多少の導入に役に立つ親しみ深さは感じられるでしょうが、一貫した理解の助けになるかどうかはわかりません。

 おそらくこれらの用語は、かつての物理学者のシャレとして導入されたもので、一般の普及を考えた物ではないでしょう。今の私にはなぜこんな紛らわしい用語を使ったのか理解できませんし、今の物理学者ならこんな命名はしないと思います。一般的な形容詞+普通名詞に見える「強い力」、「弱い力」、「strange quark」も同様に思います。(「charm quark」はまだ許せる)  固有の物理的特性には、それ特有の命名をしてほしいものと思います。かすてんさんはどのように考えられますか?
2016-12-10 Sat 08:25 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>これらの用語は、かつての物理学者のシャレとして導入されたもので、一般の普及を考えた物ではないでしょう。
 シャレで命名されたものには秀逸なものもあっていいですよね。深くまでは必要のない一般の人にイメージを作ってもらうのに役に立っている面もあるように思います。でも確かに「重力」「電磁力」ときてなんで「強い力」「弱い力」ってここで子供レベルのボキャブラリーになってしまったんですかね。
2016-12-10 Sat 09:41 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>シャレで命名されたものには秀逸なものもあっていいですよね

 たとえば、湯川秀樹博士の中間子理論を "Heavy quantum theoty" と呼んだのは秀逸だと思います。これは、"light quantum" (光量子)の lightの「光」と「軽い」という意味を掛けたものですが、簡単な英語ながらシャレなので日本語へは訳せず、後には「中間子」(meson)としか呼ばれなくなったのはちょっと残念でした。
 ちなみに「中間子」というのは、質量が電子と陽子の中間にあるという意味から来ていて、いわば中程度に重い、ということですから、heavy quantum と共通する意味合いはあります。
2016-12-10 Sat 09:59 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
クォークの用語など洒落とメルヘンの世界ですね。命名エピソードからしてすでに洒落のようですし、色だの香りだので分類するのも洒落ています。strangenessやcharmも素敵な命名だと思います。こんなことを書いているうちに、ジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を読んでみたくなりました。
2016-12-10 Sat 21:23 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>クォークの用語など洒落とメルヘンの世界~『フィネガンズ・ウェイク』
 高い評価をされていますね。確かに、物理学に文学との接点を求めるような心情があった時代(1950~70年代)を反映しているのかもしれません。グルオンジェット、Wボソン発見の頃から、より物量で、よりわかりやすく、より知名度を稼ぐようにというふうに世の中変わったかもしれません。
 
2016-12-11 Sun 08:31 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>物理学に文学との接点を求めるような心情があった時代(1950~70年代)を反映しているのかもしれません。
 湯川-坂田の流れが注目される中で、西洋人が東洋思想に神秘性を感じていたので、受け入れられやすかったのではないでしょうか。それにいつまでも拘らなかったのも良いことだったと思います。
2016-12-11 Sun 09:42 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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