33年の時間を巻き戻し天文少年ならぬ天文壮年へ再入門。隊員1名、200mm、65mmの望遠鏡と双眼鏡で星空を楽しんでいます!
奥井潔先生1976年春の最終講
2018-07-17 Tue 00:00
1805052.png以前、予備校時代の日本史の金本正之先生について書いた中に、英文学の奥井潔先生のお名前も短く紹介したことがあった。そこにも書いた様に講義の録音テープが手元に残っていたので、1976年春の最終講義のそのまた最後の部分の録音を文字起こししてみた。52歳頃の若々しく落ち着いた肉声だ。聞き取れない部分は●にしてあるが、文字にした部分にも聞き間違いがかなりあると思われる。当時でも文系理系では状況はかなり違っていたが、さらにその後の40年間の社会状況の変化は大きく、現在ではなかなか受け入れてもらえない部分もあると思われる。ご興味あれば下のリンクからお読みいただきたい。
[写真は『週刊金曜日2012.2.24(884号)』より]
〜完全な作家として成長していくことになりますね。これから後、これら『The Summing up』の16章、17章でありまして、この後18章でセントトマス病院時代の医学生時代の経験の主に●であります。

これでもって諸君とモームを3つ読んだ。一つは第1学期に読んだ『The Promise』(約束)、それから2学期に読んだ『Home』(ふるさと)というやつ。そしてこのエッセー(『The Summing up』)。それからもう一つ、小説はあと一つグレアム・グリーンの『The Innocent 』という、そういうやや宗教的な色彩の濃い幼年時代の朴な回想が中心になっている小説を一つ読んだ。それから論文形式としては、ハックスレイの、オルダス・ハックスレイの『美の作業』[註1]という社会批評、もう一つが文芸批評である『美への絶対真実』[註1]という●い段階の本を読んだ。計6つが27回の私の講義の全教材でありました。で、この6つはそれぞれ独立しておりますけれども、私の講義者としての、私の意識では、この6つが実は有機的に私の講義によって連結されて、ある一つの統一あるまとまりがあったのではないかと、私はそう信じております。それが伝達されたかどうかは分かりませんが、一言で言うと、ある人生に対する「態度」の問題を私は一番重要視して、それをもってあらゆる講義を繋ぐ架け橋にしたつもりであります。それが伝わったかどうかはまた別の問題ではありますが。いずれにしても私はそういう風に講義して参りました。まぁ、この講義形式が私にとっては、中学校だろうが、高校だろうが、大学だろうが、予備校だろうが、大学行ってるのとまったく変わらない一貫した講義形式でありますから、変えようもないのであります。いずれにしてもこれで講義を閉じます。でも諸君はこれで予備校、つまり浪人生活から手を引き、自由な民、より暇に恵まれた大学生活に突入していくのね。どうか大学生活4年、もしくは5年、あるいは6年、暇に満ちた大学生活の暇を持って是非利用して欲しいですね、暇になりますからね。そして大学に入ったらすぐに図書館へ行って本の借り出しの方式をすぐに身につけるようにね。それによって諸君は万巻の書を読む一つの道筋ができたわけですね。無限の暇がある、●、現在の何倍もの暇に恵まれた4年、5年間の生活がある。万巻の書を読む機会に恵まれる、そして孤独な部屋が一つあれば、これをもって理想的な青春と考えるわけですね。そして多少これ[註2]はあって欲しいですね。年に何回か旅行するこれ[註2]はいる。これさえあればもう理想的な青春時代だと考える。アルバイトはできるだけしないように。長いアルバイトがたくさん待っているのに、学生時代からアルバイトする暇がありますか。そんな暇があったらスポーツやって欲しい、山に登って欲しい、金は親から分捕って欲しい。そのために親はいよいよ●に働いて寿命を●ている。ただ、親の足があまりに細い場合には嚙り殺すといけませんから、適当に絞ってもいいし、ただアルバイトした金で行くよりは、親から金を奪って、遊び勉強して欲しいですね。それは僕の偽らない考え方です。そして、●にして大学生活は楽しいですね。大学卒業して社会に出て行く時にね、大学時代の充足した4年間、5年間の勉強が勉強だったと、思えば駿台時代に勉強したつもりになっていたけれども何にもしていなかった様なもんだと、そう言い得るような学生になって欲しいですな。卒業にあたって、結局身についたものは麻雀だけだった、俺の勉強の結局ピークは駿台だったなんてね、そんな学生にだけはなって欲しくないですね。どうか大学教授には期待せず、大切なことは全部自分一人の読書によって、孤独な部屋で発見したテーマであり、それを育てる努力だと考えて、大学へ行ったら、期待しなければ、案外いいのに会うかもしれません。馬鹿ばっかりいるわけじゃないのだから。やっぱり何人かのいいプロフェッソールが必ずいるに違いない、それは期待を掛けてみないとめぐり合えることはないような気がする、どっちにしてもね。ま、多幸な一生年間[註3]であることを祈ります。以上。
 [註1]原題不明。
 [註2]金。指でOKジェスチャーをしたと記憶。
 [註3]音では「タコウナイッショウネンカン」と聞こえる。
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この記事のコメント
かすてんさんは、一流の良い予備校に行っていらしたのですね。こういうところだと、大学には行かなくてよい、と予備校に居座ることになる人もいないのでしょうか。

 この先生のおっしゃっているような万巻の書物を読む暇のある大学はもうなくなったかもしれませんね。それ以前に、こんな先生のいる予備校もなくなったかもしれません。最近は、授業をしない予備校、というのを宣伝しているところもあります。
2018-07-21 Sat 10:10 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>こういうところだと、大学には行かなくてよい、と予備校に居座ることになる人もいないのでしょうか。
 何浪もしながらこの予備校の主になっている人がいたのかどうか、私は幸いにして一年で足を洗えましたので知りません。ただ受験勉強のテクニックだけを教えるという教師は極めて少なかった印象です。早く浪人から足を洗って、その先、大学へ行って学びたいという動機付けをしてくれる教師が多かった様に思います。

>この先生のおっしゃっているような万巻の書物を読む暇のある大学はもうなくなったかもしれませんね。それ以前に、こんな先生のいる予備校もなくなったかもしれません。
 本当に、いまから振り返ると、古典大学時代の古典的教授ですね。そういう最後の時代に遭遇できたのだと思います。
2018-07-21 Sat 16:03 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
>受験勉強のテクニックだけを教えるという教師は極めて少なかった
 ちょっと意外ですが、浪人して予備校に通ってでも希望する大学に入りたい人はモチベーションの高い人と言えますから、それを維持するために、「大学に入るとこういうふうに本当の勉強ができるぞ」、「予備校の私の授業どころではないぞ」ということを教え続けるだけで、予備校の授業の価値があったのかもしれないと思います。

 現在の大学がそれだけの期待に応えるものであるか。
 必ずしもそうではない、と予備校の先生たちに見破られる時代になると、そういう予備校も自然に消えていくのだと思います。

 「社会で役に立つ『人材』を作ること」、結果的にそういう人材が得られることは悪いことではありませんが、「社会で役に立つ『人材』を作るための大学」というのは、どうもいただけません、というか、道を踏み外しているように思います。
2018-07-22 Sun 16:13 | URL | S.U #MQFp2i1U[ 内容変更]
>浪人して予備校に通ってでも希望する大学に入りたい人はモチベーションの高い人と言えますから、それを維持するために、「大学に入るとこういうふうに本当の勉強ができるぞ」、「予備校の私の授業どころではないぞ」ということを教え続けるだけで、予備校の授業の価値があったのかもしれないと思います。
 もともとモチベーションの高い生徒が集まる予備校ではあったとは思います。そういう生徒ですから、おっしゃるように「大学へ行って学問を極める喜びってこんなもんじゃないぞ」ということを焚きつけて、少しのコツを教えてくれるだけで、勝手に勉強して目的を達成したのだと思います。

>現在の大学がそれだけの期待に応えるものであるか。必ずしもそうではない、と予備校の先生たちに見破られる時代になると、そういう予備校も自然に消えていくのだと思います。
 もしも、こういう時代になるまで奥井先生が生きて大学の惨状をご覧になったら、若い人たちにどの様な希望を提示してくれただろうかと考えてしまいます。

>「社会で役に立つ『人材』を作るための大学」というのは、どうもいただけません、というか、道を踏み外しているように思います。
 明治の初め、東大はその様な目的で作られた大学だったと思います。目的はそうでも、余裕がありましたから優秀な学者だけでなく、優秀な政治家や官僚も生み出しました。今は余裕がないので。道を踏み外した大学が道を踏み外す人間を排出するだけになってしまった感があります。他の大学が「社会で役に立つ『人材』を作るための大学」などと東大と同じ目標を標榜しても、そもそも太刀打ちできませんね。
2018-07-22 Sun 20:18 | URL | かすてん #MLEHLkZk[ 内容変更]
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